エレガンス南アフリカの動き
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(2017.8.28更新)
南アの葡萄産地を、例えばスペインの銘醸地と平均気温で比較した場合、南部よりは寒く、北部よりは熱くなります。つまり一般的にアフリカ大陸に持つイメージとは異なり、エレガントなワインが生まれる気候帯です。
実際に南アのワインは、エレガントで高級感に溢れたスタイルにも拘わらず、安ワインとのイメージが先行しました。日本では、必死に力強さを引き出したスタイルの南アが中心に輸入されていますが、なぜそうなってしまったのか?
世界的に注目される、南アの本当の姿を下記にまとめました。
①「欧州の輸入量NO.1」欧州を席巻した南アのエレガント・ワインが、なぜ日本で知られていないのか?
日本でワイン文化が発展した1970年代~80年代。同時期に南アではアパルトヘイトへの経済制裁が行われ、海外へのワイン輸出が閉ざされていました。厳しい経済状況に直面し、ワイナリー自体が激減した事もあり、90年代に入っても日本のワインマーケットは、南アを知らずに育つことに。しかし経済制裁の前時代(1950~60年代)、欧州での南アワインの地位は大変に高く、その輸入量は世界でNO.1を誇っていました。2016年現在、イギリスやフランスを初めとする欧州全体で、南アワインが広く親しまれ、昔と同じように人気を博しています。
②「350年のワイン史」世界最高水準のワイン大学が描き出す、未来のワイン醸造。
1659年ドイツ移民によりワイン生産開始。その30年後にはフランス人たちもワイン生産に乗り出し、多様なワイン文化が混ざりながら発展。世界に類を見ない独自のワイン文化を形成するに至り、1800年代に創立されたステレンボッシュ大学を中心にして、さらなる磨きが掛かっています。ピノタージュの開発で有名な同校では近年、アパルトヘイト以降から見て、第3世代と呼ばれる若手の有力醸造家を多数輩出。世界的な視点を得た彼らの活躍こそが、南アが再注目と共に喝采を浴びる原動力となり、いにしえのワイン王国を復活させたと言っても過言ではありません。ワイナリーの減少で放棄された高樹齢の葡萄畑。そこに最新の技術が入り、目覚ましい発展を遂げているところも良く見かけます。
③南アに誕生した「ボルドー」「ブルゴーニュ」「ローヌ」。小さな産地の多様なテロワール。
●ステレンボッシュ: 南アの第一銘醸地。海からの冷風を受け止める山脈の存在。その気候と砂岩土壌が生み出すカベルネの性質は、まさにボルドーと共通する。
●ヘルマナスを中心とするヘメル: 海岸の冷涼な気候。花崗岩を中心とした土壌がブルゴーニュの南部を連想させ、ピノノワールのメッカとなっている。
●スワートランド: アフリカ大陸らしい内陸部の乾燥地帯。シスト土壌が育てるシラー、グルナッシュが世界的な評価を得ている最新の注目地域。
④「南アの赤ワインは冷やして飲む」が正解。南アの特異なテロワールがなせる味わい。
南ア最大の特徴は、アフリカの焼けるような太陽光と、海岸の凍えるような風。強烈な太陽は葡萄を焦がし、ジャムのように凝縮した果汁と、柔らかなタンニンを生み出します。ところが日没後に訪れる冷風の効果で、豊かな酸味も与えられる事から、他国に類を見ない南ア独自の味わいとなります。現地では、この特徴を最大に生かす飲み方として、赤ワインを冷やして飲む事が一般的に見られます。一度、ぜひ試してみて下さい。
有限会社トロワイグレック代表 山本俊